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浦和地方裁判所 昭和55年(行ウ)6号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一原告は、本件随意契約の目的であるストーブの燃料に使用される灯油の供給事情は安定し競争入札をしても落札業者が容易に灯油を供給でき、灯油の供給を条件とするものではないから競争入札に付すると不利になるとの随意契約の要件を具備せず違法である旨主張する。

1 しかし、右原告主張の事実を認めることのできる的確な証拠がないばかりでなく、<証拠>を総合すると、次の事実を認めることができる。

(一) 国内における石油製品の供給量は、灯油を含め一般に昭和五四年夏以後中東情勢の不安定や、産油国の大幅な輸出制限、値上げなどの影響を受けて、元売各社による供給削減が続き、埼王県内においても石油小売店による新規需要への供給制度と同年六月からの価格の急騰のため、公共施設用及び民生用の灯油に対する影響が深刻化し、埼王県では同年七月三〇日石油製品需給緊急対策要綱を制定して石油需給緊急対策室を設置し、業者との連絡協議会を発足させて、需給調整のための行政指導を強化することになつた。当時被告町でもその対応に苦慮し、特に人口急増による新規需要の増加もあつて、同年一〇月ころからは、冬期の暖房用灯油の供給確保が緊急の課題となつていたが、冬期の民生用灯油の供給が前年度実績に対し同量(一〇〇パーセント)の入荷量を維持できる見込みのあるのは、町の調査では、ハタヤと田中石油(各日本石油系)だけで、他はすべてそれを下回つていた。本件随意契約のストーブは鶴ケ島町の小・中学校の児童、生徒のための暖房用として買入れるため、灯油の確保がその先決問題であり、灯油供給の見込みのないかぎりその業者からストーブを買うことは不可能の状態であつた。したがつて、被告岸田の部下職員としてはまず灯油の供給業者を選び、その者とストーブの随意契約をすることを余儀なくされた。ハタヤは右ストーブの灯油についても必要量約三七キロリットルを供給するため努力することを確約し、ほぼその見込みがあつた。

(二) 灯油の供給価格も不安定で、前記人口急増による需要増に対し供給減少のため価格の変動が激しく、安定した業者を選ぶ必要があつた。ハタヤは一リットル当り金五五円で供給することを約定しており、共栄ガスは一リットル当り金五六円とする申出をしたが、供給量に問題がある上その算定基礎も異なり、また、他業者の一リットル当り金六三円(埼王県平均)よりかなり廉価で(必要量全体の価格でハタヤの方が約金二九万余円安くなる。)、安定した価格でその供給を受けられる見通しであつた。

(三) このような事情の下でストーブを競争入札に付した場合、ハタヤがこれを落札するとは限らず、たとえば共栄ガスなど他の業者が落札した場合前記必要量全部を供給できるとは限らず(共栄ガスの場合月間三、四〇〇リッター四か月分供給可能の回答があり、従前の販売実績は需要期で総量一キロリットル程度にすぎなかつた。)また、ストーブと灯油を切離して買うことは当時の前記灯油供給事情からみて不可能ないし困難なことであるが、これを一括して競争入札に付することは技術的な困難があり、その行政実例も見当らなかつた。

四(イ) 被告鶴ケ島町は昭和五四年一〇月二二日同年度の暖房用灯油の購入を決定したが、そのうちにはまだ本件随意契約の対象となつたストーブに使用すべき灯油を含まず、したがつて、その分についてハタヤに対し送付納入すべき場所も指定していなかつた。

(ロ) 同年一〇月二四日ストーブの見積り合せに関する町の現場説明会が開催され、業者側からはハタヤの他、共栄ガス、吉見ガス株式会社、株式会社内田商店が出席し、内田商店からその席上、「ストーブを納入した業者は灯油も納入しなければならないのか。」との質問がなされ、町としては灯油供給を条件としていたが、町側の出席者は契約の所管課ではなく教育委員会学校教育課の職員で、企画財政課との連絡が不十分であつたため、誤つて灯油供給を条件としない旨述べた。

(ハ) ハタヤも本件随意契約に際し被告岸田の部下職員から、そのストーブの燃料用灯油の安定供給が条件であることを告げられ、なかなか容易なことではないことを認識しながらもその努力をするとして、結局これを承諾の上、本件随意契約をした。

以上のとおり認められ、右認定を左右する証拠はない。

2 右1認定の事実によると、本件随意契約時(昭和五四年一一月二一日)の灯油供給事情は窮迫しており、先ず燃料として使用すべき灯油についてその必要量約三七キロリットルを安定した価格で供給できる業者を選定の上、その業者とストーブ七七台の買入につき随意契約をしないかぎり、ストーブを買受けても暖房用に使用し得ない事態となる虞れが多分にあつたものというべきであり、そのため、被告岸田の部下職員がそのような灯油供給可能な業者としてハタヤを選定の上これとストーブに関し本件随意契約をするにいたり、ハタヤに対し灯油の安定供給を約束させその契約条件としたもので、右のような事情のもとでは、ストーブの購入方法について、同法施行令一六七条の二の一項四号にいう「競争入札に付することが不利と認められるとき」にあたるものと解するのが相当である。したがつて、本件随意契約は、その随意契約ができる場合の要件を具備し、適法であり、この点の前記原告主張は失当である。

(高木積夫 小林敬子 坂部利夫)

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